2003年9月25日。 僕は小雨の中、車を走らせていました。

      後ろの座席には弟。 そして、冷たくなってしまった久作・・・・・・・


      9月24日。 久作は永い眠りにつきました。 11歳でした。


      6月のある蒸し暑い日、散歩の途中でへたり込んで動かなくなってしまったサク。

      多少息が荒いようでしたが、頭を撫でてやると喜んで擦り寄ってきたサク。

      やっぱり年だから体力が衰えている・・・・・・。

      サクと一緒にいる時間を増やすためと、一種の願掛けで釣りに行くのをやめました。

      できるだけ一緒にいてやりたい。 休日の前夜はサクの所に泊まり、シートを敷いてサクと並んで寝ました。

      時にはまろもいっしょに。 そしてノラもいっしょに。

      8月の始め、暑くなり始めた頃からサクの足がまた立たなくなり、自分ではあまり歩けなくなりました。

      涼しくなり始めた頃、回復の兆しがみえ、自分の足で歩けるようになり、また散歩に行こうな・・・と話していたのですが・・・・・・

      22日の夜から何も食べなくなり、23日も寝てばかりで、撫でてやると時折頭をもたげ、『もっと』と催促していました。

      23日の夜、翌日は仕事でしたが心配なのでいっしょに寝ました。

      撫でてやると喜ぶサク。 クゥ〜ンとなきながら頭を激しく摺り寄せてくるサク。

      24日朝、サクを小屋の中に寝かせ、僕と弟はそれぞれの職場へ向かいました。


      午後6時。 会社に父からの電話。

      「仕事は終わったのか? さっさと帰れ。 1時頃、サクが死んだぞ」

      「・・・・!」

      急いでサクのもとへ。 小屋の中、薄明かりに照らされたサク。 傍らには先に駆けつけた弟。

      サクの顔に手を当てると、冷たかった・・・・・・。 信じられなかった。

      涙が止まらなかった。 サク、苦しがったんだろうか?

      
看取ってやれなかった。 いっしょにいてやれなかった。 ごめんな。 ごめんな。 何度も謝ることしかできなかった。



      いったん家に帰り、再びサクのもとへ。 タオルでサクの体を拭いてやる。

      そしてサクの横で眠った。

      左手をサクの胸に乗せると、まだ呼吸をしているように思えた。 そして、夢の中でサクは歩いていた。



      翌日、僕は会社を休んだ。 弟は午前中で早退。 昼過ぎにサクのところでおちあい、準備をする。

      シーツでサクの体をくるみ、僕の車に乗せた。 そして自宅へ。

      サクが大好きだった祖母にあわせてやりたかったから。

      そして、米子市にあるペットの火葬場、『大山メモリアルパーク』へと向かう。

      片道およそ2時間の道のり。 何度も運転を交代し、サクを撫でる。

      火葬したら、もうこうやってサクに触ることはできなくなってしまう・・・・・。

      午後3時、ついに到着してしまう。

      用意されていた棺は思ったより小さい。 こんなのに入らねーよ・・・・。

      と思っていたらいきなりサクをくるんだシーツを持って車からひきずりおろそうとする職員。

      ち、ちょっと! あわてて抑えた。 僕と弟でサクの頭と胴体を抱えて棺の中へ。

      棺の中でサクはとても窮屈そうだった。 腹立たしかったが、ここにある炉の大きさだとこのくらいの棺でめいっぱいらしい。

      棺の中にたくさんのフードとジャーキー、骨ガム、花束を入れる。 そして、僕の一番のお気に入りだったTシャツ。

      これは前日の夜からこの日の昼まで着ていたものだ。

      そしてサクの体と最期のお別れ。 顔を撫でてやると涙があふれた。

      もうサクのこのふわふわした体にふれることはできない・・・・・・・。

      扉が閉まり、ゴオオオオオ という音が聞こえ始める。


      1時間後、職員に呼ばれてサクのところへ・・・・・・。

      変わり果てたサクがいた。 白い骨だけになってしまったサク。

      これがサクなのか・・・・・・。 あの世界一男前だったサクがこんな姿に・・・・・・。

      ひとつひとつ骨を拾っていく。 涙をながしながら、ひとつひとつ拾った。



      サク、ありがとうな。
      サクがいなかったら、ほんとに今頃どんな人生送ってたかわからんよ。
      サクにはどれだけの言葉を送っても足りない。

      サク、ごめんな。 いたらんお父ちゃんで。
      ほんとにサクにはなんにもじゅうぶんなことをしてやれんかった。
      「いついなくなってもいいように、おもいっきりかわいがってやる。」
      そんなことを言いながら口ばっかりで、なんの恩返しもできんかった。
      ただ、苦しい思いをさせただけだった。
      サクだったら世界中、どこにいってもかわいがってもらえただろうに。
      もっともっと幸せになれただろうに。

      僕のところにやってきたことがサクにとってよかったのかどうかはわからない。 自信がない。
      僕はほんとに、なにもかもいたらなかった。
      でも、僕の家族達、友達、親戚、ご近所の方、僕の同僚、父の仕事関係の方たち、
      ネットで知り合った方たち、たくさんの人たちがサクをかわいがってくれた。
      その点に関しては、サクは幸せだったに違いない。

      そして何より、僕自身はサクがいてくれたおかげで最高に幸せでした。


           サク


      つらいこと、悲しいことがあったときでも、サクはいつも最高の笑顔でいてくれました。


      
11年間、いっしょにいたサク。 これからもずっといっしょです。
      サクはぼくのとなりにいます。


                                       2003年 9月27日 管理人






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